道路と電力インフラが一体化する「充電する道路」 走行中ワイヤレス給電ユニットを 舗装表層に露出設置する実証実験を開始~研究横断・産学連携による電気電子工学×土木工学の分野をわたる 研究・開発エコシステムを構築 ~

2026/06/12
  • プレスリリース

芝浦工業大学(東京都江東区 学長 山田 純)工学部 勝木 太 教授(コンクリート構造研究室)と 畑 勝裕 准教授(先進電源システム研究室)および世紀東急工業株式会社(東京都港区 代表取締役社長 平 喜一)、技術部 板東 芳博(技術部長)と加藤 裕康(技術企画グループリーダー)は、このたび、電気自動車(EV)の走行中に給電を行う「走行中ワイヤレス給電(DWPTEV方式」の社会実装を見据え先行研究が少ない舗装表層に給電ユニットを露出設置する実証実験を開始しました。
本研究は、電気電子工学×土木工学といった複数分野の研究者が横断的に連携し、さらに舗装・社会 インフラに豊富な知見を持つ企業と協力することで、実用化を前提とした研究開発エコシステム構築を 目指しています。

 

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実験設備の構造・給電ユニット設置状況

ポイント

・走行中ワイヤレス給電ユニットを舗装表層に露出設置するにあたり、実車スケールの実証実験に使用可能な給電ユニットを開発しました。
・給電ユニットと電源設備を接続する配線方法や、防水・遮水性能の確保、結露への対策など、これまで十分に整理されていなかった実務上の課題を抽出しました。
・複数の施工手順案を検討し、その中から3つの案について実証試験により施工性を確認しました。

研究のポイントと現時点での成果

走行中ワイヤレス給電は、道路に埋設した送電コイルからEVへ非接触で電力を供給する仕組みです。
先行研究では、送電コイルを舗装材料で覆う埋設方法が一般的でした。しかし「伝送距離の増加」や「施工・補修にかかるコスト増加」などの課題がありました。
そこで本研究では、送電コイルを舗装下に深く埋設する従来方式ではなく、舗装材料で覆わずに表層に設置する構造を採用しました。これにより、掘削量の削減、施工時間の短縮、補修時の再開削不要といった現場負担の軽減が可能になります。 実証実験では、給電性能だけでなく、電源設備との配線取り回し、車両荷重に対する耐久性、施工手順の標準化までを一体で検証していきます。
本取り組みでは、実車スケールでの施工計画を立案し、施工方法を最適化しながら、必要工数(人員・時間)や概算費用の見える化を進めています。研究段階から“施工できるか”“維持管理できるか”を前提に設計している点が特徴で、将来の道路更新工事と同時施工できるインフラ技術としての成立を目指しています。なお本研究は、本学の分野横断チームに加え、舗装・社会インフラに豊富な知見を持つ世紀東急工業と連携して進めています。
特に、給電ユニットと電源設備の配線ルートや止水処理などは、電気工事と舗装工事の境界領域であり、まだ十分に整理されていなかった実務課題です。

走行中ワイヤレス給電(DWPT)の利点(通常EV方式との比較) 

要素

通常EV方式

走行中ワイヤレス給電(DWPTEV方式

バッテリー容量

長距離走行に備え、大容量バッテリーの搭載が必要です。

走行中に給電できるため、大容量バッテリーが不要になり、小型化が可能です。

車体コスト・重量

大型バッテリーにより車両価格が上昇し、重量も増加します。

バッテリー削減により、車体コスト・重量ともに低減が期待できます。

航続距離

一充電あたりの航続距離に制約があり、長距離移動では充電計画が必要です。

走行中給電により実質的な航続距離が大幅に延びます。

充電インフラの混雑

急速充電器への集中により、充電待ち渋滞が発生します。

道路側で給電するため、充電ステーションへの依存が減り、渋滞緩和が可能です。

社会インフラとしての将来性

充電設備の増設が中心で、交通インフラとの連携は限定的です。

道路と電力インフラが一体化し、「充電する道路」という新しい社会基盤が実現します。

 
pic.4通常EV方式概念図
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走行中ワイヤレス給電(DWPTEV方式 概念図

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給電ユニットの設置状況

  

共同研究の意義

走行中ワイヤレス給電は、EVの航続距離不安を解消し、将来的な充電インフラの在り方を大きく変える可能性を持つ技術です。一方で、この技術は単なる電気設備ではなく、「道路」という社会インフラと一体で整備される必要があります。
これまでの研究開発は主に電気電子分野が中心でしたが、社会実装には土木、材料、機械、情報といった多分野の知見が不可欠です。そこで本研究では、電気電子分野の研究者に加え、他分野の研究者および舗装作業に豊富な実績のある世紀東急工業株式会社の参画を得て、道路舗装や都市インフラの観点を取り入れた技術開発に取り組んでいます。
芝浦工業大学・工学部の分野横断型教育研究体制の強みを活かし、機械・電気・情報・材料・土木の研究者が連携することで、他機関では構築が難しい実践的な研究体制の構築を進めています。

  

今後の研究展望

今後は、実証実験を通じて得られるデータを基に、施工性・耐久性・コストなどの観点から技術の高度化を進め、走行中ワイヤレス給電の社会実装に貢献していきます。給電ユニットの電気的性能および機械的性能を改善するための設計最適化に取り組みます。また、今回の実証実験では舗装施工を主眼に置いたため、電源設備や車両側システムの構築が不十分であり、システム全体の性能評価を実施できていません。そのため、個々の要素技術を高度化するとともに、多様な研究開発を実施可能な実証システム全体の構築に取り組みます。
さらに今回の実証実験で得られた知見をもとに施工方法の改良および付帯設備の最適化などに取り組みます。特に、既存舗装の掘削と給電ユニットを含む構造物の設置、配線・配管の接続、舗装の埋戻し・復旧など、実際に施工を行ったことで得られた知見を最大限に生かした研究開発を行います。

研究助成

本研究は芝浦工業大学が支援するS-SPIREプログラムに選ばれています。

 

芝浦工業大学とは
工学部/システム理工学部/デザイン工学部/建築学部/大学院理工学研究科
https://www.shibaura-it.ac.jp/
理工系大学として日本屈指の学生海外派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動が特長の大学です。東京都(豊洲)と埼玉県(大宮)に2つのキャンパス、4学部1研究科を有し、約10,000人の学生と約300人の専任教員が所属。2024年には工学部が学科制から課程制に移行。2025年にデザイン工学部、2026年にはシステム理工学部で教育体制を再編し、新しい理工学教育のあり方を追求していきます。創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学トップ10を目指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。