創発研究フェロー称号付与制度

創発的研究支援事業とは、特定の課題や短期目標を設定せず、多様性と融合によって破壊的イノベーションにつながるシーズの創出を目指す「創発的研究」を推進するため、既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な多様な研究を、研究者が研究に専念できる環境を確保しつつ原則7年間(途中ステージゲート審査を挟む、最大10年間)にわたり長期的に支援する国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) の事業です。
芝浦工業大学では2022年度に2人、2023年度に1人、2024年度に3人事業を開始しています。本学はこの創発研究者支援のため、「創発研究フェロー」の称号を付与し、研究代表者として活躍することを促進するために様々な取り組みを行っています。

2022年度

工学部 教授 芹澤 愛

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軽金属のプラットフォーム化技術の確立(北川パネル)
カーボンニュートラルの実現に欠かせない軽量材料であるアルミニウム合金に対して、水蒸気を駆使して材料内部および表面の性能を同時に引き出すことに挑戦します。材料中の原子の拡散を操る「組織制御学」と、材料表面を自在に機能化させる「表面工学」、これらの学問を水蒸気を基軸として斬新に融合することによって、自動車や電池といった多分野で利用でき、次世代の社会基盤形成に欠かせない革新的軽量材料を創出します。

工学部 教授 平林 由希子

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気候変動適応支援のための超高解像度全球河川防護データの構築(堀パネル)
本研究では、河川の堤防高さデータを数十m格子ごとの超高解像度で示す世界初の堤防データセットを作ることに挑戦します。作成した現在の河川堤防の情報を反映した世界の河川シミュレーションにより、これまで適切なハザードマップが存在しなかった世界の地域において、水災保険などを提案するための基礎情報を得ることができるようになります。

2023年度

工学部 准教授 亀尾 佳貴

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脳形態形成における構造・機能創発の統合的理解(井村パネル)
脳の構造と機能との関連を明らかにし、形態形成過程を通じてそれらが安定的に創発される基本原理の解明に挑戦します。そのために、脳形態形成における分子、細胞、組織の振舞を包括的に解析し、力学と情報理論に基づいて、脳の構造と機能を同時に評価可能なシミュレーション実験基盤を開発します。これにより、擾乱に対する安定性と環境変化に適応する可塑性の両立を可能にする生命システムの本質的な理解を目指します。

2024年度

工学部 教授 土持 崇嗣

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未踏化学を拓く革新的エンタングルメント量子計算(北川パネル)
量子コンピュータは夢の計算機ですが、物質科学に活用するためには堅牢な計算アルゴリズムが必要です。本研究では、物質の状態を「複雑に絡まった紐」として捉え、これを正確にほどくための量子プログラムを展開することにより、量子計算機の性能を引き出します。これに応用数学やデータサイエンスなど古典ツールを融合することで、最先端のスパコンでも太刀打ちできない化学の未踏領域を切り拓くシーズを創出します。

工学部 教授 中野 匡規

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強相関ファンデルワールス超構造の量子物質科学(北川パネル)
薄膜エピタキシー技術を駆使することで、様々な積層配列構造や層間配列構造を有する強相関ファンデルワールス超構造を構築し、単一物質では得られない創発量子物性や従来型デバイスでは得られない革新量子機能の実現を目指します。また、試料の大面積性を活かして多角的な構造・物性評価を行い、創発量子物性の微視的な起源を明らかにすることで、強相関ファンデルワールス超構造を対象とする量子物質科学の学理構築を目指します。

工学部 准教授 木須 一彰

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共結晶・溶媒和塩が拓く新奇イオニクスデバイス(森パネル)
多価陽イオンやハロゲン陰イオンなどの高速伝導は、資源フリーな蓄電池や電気化学リアクターなどの新奇イオニクスデバイスの可能性を拓きます。本研究では、共結晶塩および溶媒和塩における配位環境制御を基軸とした材料設計によって、これら新奇イオンの高速伝導を実現すると共に、相反する耐酸化・還元性を両立する材料群を開拓します。

 

創発研究フェローへの支援制度

 創発研究フェローは、以下の重点支援策を利用できます。

(1)PI人件費支出のプロジェクト研究助成金(学内助成金)による補填

「競争的研究費の直接経費からの研究代表者等(PI)の人件費の支出に係る規程」に基づき、創発的研究支援事業(または同等の事業)において、PI人件費の支出を可能とします。さらに、PI人件費を支出した場合は、プロジェクト研究助成から同額を研究費補填として支給します。

(2)研究室事務等補助員の雇用補助

研究環境改善を目的として、研究室事務業務(研究プロジェクトに関する事務業務を含む)を補佐する派遣職員または臨時職員の雇用について、週30時間を上限として補助します。

(3)バイアウト制度の利用

「研究以外の業務の代行に対する競争的研究費の直接経費からの支出(バイアウト制度)に係る規程」に基づき、創発的研究支援事業において、PIが研究プロジェクトに専念できる時間を拡充することを目的として、競争的研究費の直接経費の使途を拡大し、PIが担う研究以外の業務代行に係る経費の支出を可能とします。

(4)URA伴走支援

URAが担当としてつき、ポストアワード業務(進捗管理・予算管理・評価対応・研究成果の発信支援・報告書作成支援)に加え、研究を多面的に支援します。

(5)その他

上記支援制度のほか、課金制共通研究スペースの利用料補助や職務専念措置など、希望があった場合は研究戦略会議にて適用の可否を審議します。