MV

価値に、革新を。

価値観やイメージを
根底から問い直す。
そこから革新的な
製品は生まれる。

メディア体験デザイン研究室

坂井 美穂Sakai Miho

動態デザイン研究室

宮本 比陽子Miyamoto Hyouko

物流機器メーカー・花岡車輌株式会社で販売中の
かご台車『DANDY PORTER KAKU CROSS』。
無骨なデザインや運ぶだけという「当たり前」に
疑問を抱いた学生が、同社と共同研究開発。
かご台車の新たな可能性を切り拓きました。

宮本 比陽子
当たり前を問い直すと、新たな価値が見えてくる。

当たり前を問い直すと、
新たな価値が見えてくる。

産学連携授業で、花岡車輌株式会社の新製品を提案するという課題が与えられました。物流業界で広く使われるかご台車は「効率的に運ぶこと」のみを追求した無骨なデザインが主流。搬入が終われば見えない場所に隠される存在でした。一方で、優れた耐荷重性や、スーパーマーケットなどでは什器として使用されていることがあり、私たちはその可能性に着目しました。

「かご台車がダサいのは当たり前なのか」というコンセプトのもと、私たちはこれまでの価値観やイメージを根底から問い直し、新しいかご台車の可能性を追求しました。当初の案は企業内で評価され、授業の枠を超えて製品化開発へ進むことに。しかし、実際に工場を訪れて生産工程を見学すると、授業時の案はコスト、安全性、強度、製作工数などの面から、そのまま量産することが難しいとわかりました。その結果、当初の案はコンセプトを残しながらも、形状や構造、用途を一から見直すことになったのです。

「運ぶ」を超えて、空間の可能性が広がる。

「運ぶ」を超えて、
空間の可能性が広がる。

フィールドワークを重ね、かご台車の常識であった三方の柵を排し、上部にクロス構造を持つデザインにたどり着きました。クロス部分にはボルト穴があり、専用のボルトを入れることでパネルを吊るして商品を飾ることができ、台車部分にクッションを配置すれば公共空間での「個室ブース」として座ることもできます。荷物を運んできた台車が、現場でそのまま「吊るす展示什器」や「座れるパーソナルブース」へとシームレスに役割を変えることを可能にしました。
本製品を国際物流総合展に参考出展したところ、高い評価をいただき、細部のブラッシュアップを行った上で正式に市場で販売されることになったのです。

CONTENT
デザインは変わっても、ブレないコンセプトを。

デザインは変わっても、
ブレないコンセプトを。

私は卒業研究でも継続してこの共同開発の検証に取り組みました。授業では、主にコンセプトの面白さ、視覚的な魅力が重視されていました。一方、実際に製品化を目指す量産段階では、作れる構造であるか、コストに見合うか、市場で受け入れられるかといった、より現実的な条件が重要になります。また、授業時には「運ぶ」「飾る」といった基本的な用途を考えていましたが、量産時には市場の広がりを意識し、「座る」「吊るす」など新たな使い方も検討しました。フェーズが移ることでデザインが変わることは失敗ではなく、製品として成立させるための進化であると考えます。大切なのは、「かご台車の当たり前を問い直す」というコンセプトは最後まで変わらなかったこと。プロジェクトの方向性を支える考え方が一貫していれば、開発全体の軸を保つことができるとわかりました。

小さな違和感や気づきが、イノベーションの源泉。

小さな違和感や気づきが、
イノベーションの源泉。

研究を通して、学生でもコンセプトや量産時に必要な視点を意識することで、社会実装や製品化につながる可能性があることがわかりました。製品化と聞くと、専門的な知識や特別な技術を持つ人だけが実現できるものだと思われがちです。しかし私は、日常の中で感じた小さな違和感や気づき、ちょっとした発見こそが、新しい価値やイノベーションを生むきっかけになると考えています。

イノベーションというと、0から何かを生み出すことをイメージするかもしれませんが、実際には日常に潜む「どうしてだろう」と常識をちょっと疑うところから始まるのではないでしょうか。私たちのデザインした製品が、ユーザーの方に「実はこんな製品が欲しかったんだよな」と思って貰えたら幸いだなと思っています。

CONTENT

挑戦を受け止めてくれる
環境がある。

今回の開発では、担当教授から「本気で取り組めば製品化もあるかもしれないよ」という言葉に背中を押されてここまで走ることができました。芝浦工業大学は、本気で取り組む学生に対して、真摯に向き合ってくださる先生方が多いと感じます。「こういうことがやってみたい」という学生の挑戦を受け止め、チャンスを与えてくれる環境があります。

学生の成長を本気で考えてくれる大学です。特にデザイン工学部では社会実装に根ざした学びが重視される傾向にあり、学生にとって必要な学びや、社会に何を提供できるのかを常に考え、実際に形にしていると感じます。思い切って行動し、たくさん失敗しながら成長できる。それが芝浦工業大学の良さだと思います。

装飾